精霊祭の奇跡 [小説]精霊祭の輝石 [小説]

October 31, 2009

精霊祭の軌跡 [小説]

「トリック・オア・トリート!」

 元気な精霊さん達は思い思いの姿で我が家のドアを開ける。
 今年も賑やかなものだ。私はその澄ました様子を微笑ましく思いながらバスケットを差し出した。

――あの子も今頃ならこれくらいかしら。

 小さな妖精に面影を重ねながら。もう何年も経ってしまったけれど、あの子のことはこの胸の中にずっと留まっている。
 最後の男の子がクッキーを手にとる。深く被ったとんがり帽子の下から可愛い声がした。


「ありがとう、おかあさん」


 その笑顔を呆然と見送る。
 パタリと静かに閉じる扉。遠ざかっていくはしゃいだ声と、言葉に表わせないざわめき。
 ――今のは、もしかして…

 慌てて押し開けたドアの向こうはいつもの夕闇。

 出て行ったばかりの子供達の輪に、魔法使いの姿は見当たらなかった。


END.
Index4




asa10_s at 14:12│Comments(1)小説。創造と想像 

この記事へのコメント

1. Posted by 朝斗   October 31, 2009 14:15
後書

元々twnovelとして書いた作品の補足なので、他作品に比べて極端に短いです。

でもまぁ、たまにはこんなのも。

ちなみにこの『ハロウィンのキセキ』シリーズは続き物ではありませんが他にも幾つか書きました(または今後も書く予定)ので、オムニバス短編として楽しんでいただければ幸いです。

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