本。愛読中毒

November 14, 2010

毒吐きの姫と、異形の王子

『それは生れ落ちると共に国を呪い、世界を呪った姫君と、
夜の王に祝福を受けた、異形の手足を持つ王子の歪な物語。』

『毒吐姫と星の石』
紅玉いづき 電撃文庫



呪いと毒を吐く姫君、エルザ。
生まれながらにして国を呪い、国のために城へ呼び戻されたひとりの少女。彼女は占者たちに囲まれ、告げられる。
「国の未来のために、ある国の王子のもとへ嫁ぐよううに」と。

彼女に拒否権はない。決めるのは星の巡りであり、それを読み解くのは占者たちである。
エルザは呪いの言葉を吐き続ける。
「こんな国、ほろびてしまえ」
占者達はエルザの唯一の武器である声を封じ、姫君に多くの作法を教え込んだ。

そして彼女が向かう、聖剣の国レッドアーク。
その国で待つクローディアは、四肢に不気味な紋様の浮かぶ『異形の王子』と謳われていた。


読みました!『ミミズクと夜の王』の続編にあたるお話です。
前作で舞台になっていた国と人々は、今も森の加護を受けて平穏に暮らしているようです。

しっかり前作を読み返してから読んだのですが、ディアは精神逞しく成長を遂げているようで安心します。

吐き続ける毒で、周囲を傷つける姫君。
国の駒として扱われ、逃げ出そうとする少女。彼女を受けいれる優しき人々。賢しき王子。

あなたに帰る場所があるのなら、逃げ出してかまわない。

あの、夜の王と真昼姫の寓話のように。


誰かを傷付けながら、自らも傷を負う優しい姫君。
本当は精一杯背伸びをした幼い少女。
そして彼女は、自らの国に向かって吐いた呪いに後悔する。


『あの子』は本当に真昼の太陽のように眩しいですね。
きっと幸せに生活しているのでしょう。
まさか「喧嘩をしたとか…」と騎士に心配されるとは思いもしませんでした。

それはそれで、すごく見てみたい気がします。



asa10_s at 23:35|PermalinkComments(0)

November 13, 2010

死なないはずの少女が死んだ

なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死
(メディアワークス文庫)
野崎 まど


「永遠の命を持った生徒がいるらしいんですよ」
生物教師・伊藤が着任した女子校「私立藤凰学院」にはある噂があった。当然のように信じない彼の元に、後日識別という生徒が現れる。
「教育者ともあろう者が人の噂話とは、あまり感心しないな」
自分こそが死なない生徒だと言う彼女。しかしそれを信じきれないまま、ある日彼女は何者かによって殺害されてしまう。


ライトノベルに必要なのは、不可能と非現実と記号だ、と私は思っています。
現実の中にうまく浸透した『不死』という非現実、不可能。そして印象に強く刻まれる記号。この作品には全てが揃っていました。

学校に蔓延る『永遠の命を持つ少女』の噂。赴任されてきた若い男性教師。不死に興味を示す女子生徒。四角形と五角形の間のような形。
そして、首を切られた死体。

作者の言葉選びも好きです。符号で飾り立てず煩過ぎない文体もいい。時折自然科学分野の専門的な話題が出てくるけれど、ストーリーに密接な関係があるために難なく読むことができました。

やっぱりライトノベルって、こういうマニアックかつ土台のしっかりしたものが面白いです。某世界の敵の敵然り、電波的彼女然り。

殺人事件は起こるものの、落ち着いて楽しむことのできる作品でした。



asa10_s at 22:53|PermalinkComments(0)

November 10, 2010

ダ・ヴィンチ12月号

買いました?

買いました、読みました。

待ちに待った小野不由美『ゴーストハントシリーズ』特集ですよ!

一冊目の発売ももうすぐですねぇ…絶対に手に入れます。
手に入れて初期版原作と読み比べてわいわいしたいと思います。

大幅リライト刊行に即して、12月号では大型インタビューがありました。
着物の後姿が小野主上か…お顔を映さないぶんミステリアス加減が増していますね。コミック版いなだ先生との対談もあります。
『少女読み物の王道に則って麻衣とナルと××が三角関係になる道筋があった』とか、『いなだ先生のコミック版を小説にしたイメージ』とか、思わず『ほほう』と唸ってしまう裏話も聞けます。
(どうせなら△△さんとの三角関係になればよかったのに!←贔屓)

そして11月号に引き続き、ちょっと読みもあります。
今回のでSPRメンバーが大体揃う部分まで読むことが出来ます。

はー…楽しみだなぁ。

今から気が気でないのですが、果たしてウチの近所の田舎書店で手に入るものだろうか…

今日だって探しに行ったマクガフィン・ゴーストやいづき先生のミミズク続編が並んでなくて軽く絶望したというのに。
もちろん、辻村さんの新作なんて並べてくれるはずもありません。
仙台で買ってきたからいいけどさぁ…


興奮しすぎてちょっと話がズレました。
とにかく、私もSPRファンとしては発売日を首を長くして魂飛ばして待とうと思います。

早く発売日になって!




asa10_s at 23:17|PermalinkComments(0)

October 12, 2010

コミック版『冷たい校舎の時は止まる』

『冷たい校舎の時は止まる』1~4
漫画/新川直司 原作/辻村深月 KCデラックス
(講談社)


雪の降りしきる、閉鎖された学校。
止まったままの時計。
思い出せない、自殺したクラスメート。
閉じ込められた8人の仲間達。
写真に写っていない、誰か一人。
冷たい校舎にチャイムが響くとき、誰かがひとり、消える。


そんなわけで、私と深月さんの出会いにしてデビュー作『冷たい校舎の~』のコミック版を読みました。
やはり視覚化すると理解しやすいのは何処でも変わりません。元が挿絵のない小説だったので、おお、この登場人物はこんな外見なのか。と、ある意味の答え合わせをするのも楽しいです。

やはり面白い話です。原作を読んだのはもう何年も前になりますが、あの時の感覚、感情が蘇ってきます。

そして原作同様、ぼろぼろと泣く羽目に。
特に4巻目は涙が酷いです。
細かい部分が元と違う設定になっていた気がしますが、登場人物がフルネームで表記されない分ミスリードが生きている気がします。
(とかいいつつ、原作時も殆ど騙されていたわけですが)

テーマは、学生時代の焦燥と仲間。絆。

高校生の抱える、表面には現れきらない秘めたもの。
抱えたもの。誓ったもの。
それらは、繊細で強い硝子のように。

久々に小説のほうも読み返してみようかな。



asa10_s at 21:04|PermalinkComments(0)

October 06, 2010

ダ・ヴィンチ11月号

今日発売でした。
何で急に(というか久々に)買ったかというと、前記事で騒いでいた『ゴーストハントシリーズ』の旧校舎怪談の出だしが読めるという話を聞いたから。

これはいよいよ発売が現実的になってきました。

よく考えたら11月って来週なんですよね。

さて、そんなこんなで初期版『悪霊がいっぱい!?』を片手に本誌を開いてみました。
だいたい原作を読むのすら何年ぶりという状況。果たしてどれほど改稿されているのか。

一行目…

…え、冒頭から違う!?


これは小野先生本気ですね…
ざっと流し見ただけでも文体ががらりと違います。少女年代をターゲットとしていた悪霊シリーズに比べ、今回のリライトは男女問わず普段小野先生の作品を愛読しているような年齢層も楽しめる文体になっています。

細部まで丁寧に書き込まれた一文一文。文字密度も申し分ない。これはもしや、ホラーシーンも息を呑む程に怖いのではないだろうか。
ナルの台詞回し等キャラクター設定もしっかりなされている感じがします。

どうやら書籍化したあかつきには挿絵を漫画版のいなだ先生が描かれるようで、益々期待度が高まらざるを得ません。
書き下ろしてくれるんでしょうか!?いとしのリンさんに会えるのでしょうか!?←まだ言ってる

さあ、次は来月号のダヴィンチと…え、なに?幽でも小野先生のインタビューが読めるって?
どうやらまだまだ興奮冷めやらぬ感じです。

楽しみ!



asa10_s at 21:46|PermalinkComments(0)

October 03, 2010

悪霊シリーズ、改め

そんな感じで、漫画版ゴーストハントが無事完結を迎えた訳ですが。

オビをひっくり返して驚いた、衝撃の告知です。

いわく、

『小野不由美ゴーストハント(悪霊)シリーズ、11月から隔月全編リライトで発売予定!』
(若干意訳)

えええええ(゚ロ゚;)

まじで!?あの悪霊シリーズが!?
絶版で読みたくても読めないと評判だった、あのシリーズが!?
しかも、リライト!?
思わず普段使わない顔文字なんかも使っちゃいますよ!

小野先生によれば『気になったところを直していったら大幅改稿になった』とのこと。
今年11月から幽ブックスより発売予定。気付けば特設ページも開設されてました。

悪霊シリーズ特設ページ
ttp://www.mf-davinci.com/yoo/index.php?option=com_content&task=blogsection&id=14&Itemid=88

しかもそれを受けて、12月のダ・ヴィンチではゴーストハント特集を組むそうで、アンケートまで募集中です。
ダ・ヴィンチは11/6発売、ゴーストハントシリーズ復刊第一弾は11/19発売予定。

どうしましょうどうしましょう。
今からどうやって時間を過ごそうかあせって仕方ありません。

とりあえず、上記雑誌が発売された頃にはシリーズレビューでも書き始めようかと思います。

あ、その頃になると此処も5周年か…



asa10_s at 19:05|PermalinkComments(2)

October 02, 2010

ゴーストハント最終巻

というわけで読みました。

『ゴーストハント』12巻(終)
いなだ詩穂 講談社KCなかよし


ついに。
ついに最終巻です。

思えば私がゴーストハントに出会ったのは中学にあがるかあがらないかの頃。
レイアースの延長で読んでいた『なかよし』の中にありながら、ホラーという異色な作品。
絵柄も女の子女の子していなくて、全くもって『どうしてこの雑誌に?』と思うばかりでした。
(実際のところ、他の漫画雑誌が休刊になってお引越ししてきた作品だったのですが)
そしてそれこそが、私を虜にした一因。
設定、ホラー、そして恋愛をスパイスに。
やがて原作の存在を知り、あっという間に集めてしまったのは、絶版という未来を考えれば間違いではありませんでした。

まぁ、その話はまた後で、改めて。

11巻では閉じ込められた廃校で事件の真相を暴いていましたが、今回はついに、渋谷サイキックリサーチの、引いてはナルの真実へとたどり着きます。
たどり着くというか、安原さんやぼーさんが無理矢理引っ張り出したといったほうが正しいかもしれませんが。

沈んでいるはずの彼の亡骸。
それを何故、ナルが知っているのか。
素性を明らかにしないのは?
SPRとは?
このまま皆とは離れ離れになってしまうのか。

いなだ先生の絵で、最後のシーンまで読むことができてよかったです。
原作と同じ場面でぼろぼろと泣いてしまったりして、小野先生の創ったものを微塵も薄めることなく描かれていました。
いなだ先生の書くリンさんが好きでした。アニメになって成田さんが声をあてたりして、まさに天国かと思いました。今でもクリスマス回のDVDは保守してあります。

そして、名残惜しくも完結を見守ったと思いきや、オビをひっくり返せば衝撃の告知。
これもまた、別の記事で改めて。

さてここからは、ずーっと言いたかったネタバレ考察について。
原作もコミックも未読のかた、今後読む予定のあるかたはご注意ください。
本当に。よろしくお願いしますよ。

では。


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asa10_s at 21:51|PermalinkComments(0)